大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和39年(オ)1036号 判決 1967年4月28日

上告人

平岡イサノ

右訴訟代理人

橋本清一郎

被上告人

横山賢一

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人橋本清一郎の上告理由について。

本件家屋の賃借人真野むめには唯一の相続人として姉真野よろ(明治二八年二月二五日生)があり、真野よろは真野むめの死亡当時行先不明で生死も判然としないことが認められるけれども、真野よろがその頃すでに死亡していたとの確証がない本件では、真野むめの死亡により真野よろが遺産相続人として本件家屋の賃借権を相続承継したと認めるほかはない旨の原判決の判断は、その挙示する証拠関係から肯認することができる。

さらに、真野むめは昭和一五年八月七日上告人から本件家屋を賃借したものであること、被上告人は、真野むめの内縁の夫であり、昭和二六年九月から本件家屋に同棲して互に扶け合い、真野むめが病床につき昭和三七年七月五日死亡するまでの約三年間は同人の面倒をみてきたものであり、真野むめ死亡後もひきつづき本件家屋に居住していることは、原判決の適法に確定するところである。

以上の事実関係のもとにおいて、被上告人は真野むめの家族共同体の一員として、上告人に対し、同人の賃借権を援用し本件家屋に居住する権利を対抗しえたのであり、この法律関係は同人が死亡し、その相続人が本件家屋の賃借権を承継した以後においても特別の事情のないかぎり変りがないというべきであるから(昭和三七年一二月二五日第三小法廷判決、集第一六巻第一二号二四五五頁参照)、結局これと同趣旨に出た原判決の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外 色川幸太郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例